血液をサラサラにする食べ物・飲み物は?血栓を予防する食習慣のポイントを解説
血管内に詰まりやすい「ドロドロ血液」を改善し、血液をサラサラにして血栓症を予防するためには、食生活の見直しが重要です。
この記事では、血栓による脳梗塞や心筋梗塞を予防するために積極的に取り入れたい食べ物・飲み物の具体例を紹介します。
血液サラサラ、血液ドロドロの意味やリスク要因、サプリメントの効果や生活面での改善ポイントなども解説しますので、是非参考にしてくださいね。
血液サラサラ、血液ドロドロとは?血栓症について解説
「血液サラサラ」「血液ドロドロ」は血栓によって血管が詰まるリスクの低い状態、高い状態を表す言葉です。
正式な医学用語ではなく、定義も定まったものではありませんが、血管の詰まりやすさのイメージが伝わりやすいことから、医療現場でもたびたび使われる言葉です。
血栓とは血の塊のことであり、血栓によって血管が詰まる病気のことを「血栓症」といいます。
血栓症は血栓ができる血管の違いにより、動脈血栓症と静脈血栓症に分けられます。
- 静脈血栓症…エコノミークラス症候群(肺塞栓症)
- 動脈血栓症…心筋梗塞、脳梗塞
それぞれの概要を解説します。
静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
血栓症のうち、全身から心臓に向かって血液が流れる静脈で血栓ができるものを「静脈血栓症」といい、エコノミークラス症候群(肺塞栓症)がその代表格です。
エコノミークラス症候群は脚の静脈で血栓ができ、血栓が移動して肺の血管をつまらせる疾患で、呼吸困難や胸の痛みなどの症状が知られています。
飛行機での長距離移動など、長い時間同じ姿勢でいることが原因になりますが、脱水状態や血管壁の傷(動脈硬化など)も発症に関わることが知られています。
動脈血栓症(心筋梗塞、脳梗塞)
血栓症のうち、全身の各組織に栄養を送る動脈で血栓ができるものを「動脈血栓症」といい、心筋梗塞や脳梗塞がよく知られています。
心筋梗塞や脳梗塞では心臓や脳に栄養や酸素が届かなくなるため、胸の痛みや呼吸困難、体の麻痺などの症状のほか、命に関わることもあります。
心筋梗塞や脳梗塞の原因となるのは「動脈硬化」です。
動脈硬化が進行すると、血管内で血液がスムーズに流れなくなり、血管内で血栓ができやすくなります。
一般的にいう「血液ドロドロ」とは、血液の流れやすさとは直接の関係はなく、動脈硬化によって血液の流れが滞りやすくなっている状態を伝わりやすく表した言葉といえます。
血液がドロドロになる原因
血液がドロドロ、つまり、血液が血栓ができやすい状態になる原因には、以下の3つが挙げられます。
- 水分不足…脱水により血液が濃縮されて血管が詰まりやすくなる
- 脂質異常症…血液中の脂質増加により「詰まりやすい血液」になる
- 高血圧、糖尿病、喫煙…血管のダメージにより「詰まりやすい血管」になる
それぞれのメカニズムとリスク要因について解説します。
水分不足による脱水
体内の水分が不足すると血液が濃縮されて粘稠度が上がり、文字通り「血液ドロドロ」の状態になります。
水分不足による脱水状態はエコノミークラス症候群のリスク要因です。
また、脳梗塞や心筋梗塞を惹起する原因のひとつであることも知られています。
脱水は水分摂取の不足や多量の発汗、尿量の増加、嘔吐や下痢などが原因で起こります。
脂質異常症による血液中の脂質増加
脂質異常症は血液中の脂質であるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が増えすぎたり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減りすぎたりする生活習慣病の一つです。
脂質異常症のうち、血液中のLDLコレステロール、中性脂肪が増えると、血管の内部に脂質が沈着しやすくなり、血管内にプラーク(粥腫)を形成して血管内が狭くなり、詰まりやすくなることが知られています。
また、HDLコレステロールは血管内に沈着したコレステロールを回収する役割を持ちますが、脂質異常症でHDLコレステロールが少なくなると回収作用が弱くなり、脂質の沈着を助長します。
このような働きによって血管内にできたプラーク(粥腫)は柔らかく壊れやすい組織です。
プラークが破れるとその部分の修復のために血液内の血小板が集まって血栓を作り、血管を詰まらせる原因になります。
高血圧、糖尿病、喫煙による血管へのダメージ
生活習慣病である高血圧や糖尿病に加え、喫煙習慣は血管を詰まりやすくする要因となります。
高血圧による血管内圧の上昇、糖尿病による血液中の糖の増加、煙草の煙に含まれる一酸化炭素が血管へダメージを与え、動脈硬化を進行させます。
高血圧、糖尿病、喫煙などの要因により血管の内側が傷つくと、血管の内側に脂質が沈着しやすく、プラークができやすくなり、血栓の形成や血管が詰まるリスクを高めることが知られています。
「血液サラサラ」にするための食事のポイント
血液サラサラ、つまり血栓ができにくく血管が詰まりにくい状態を作るためには、上記の原因を取り除くことが大切です。
特に食事に関しては、以下のようなポイントが挙げられます。
- 十分な水分補給
- 生活習慣病改善のためのバランスの取れた食事
血液をサラサラにして血栓を防ぐために心がけたい食習慣のポイントについて、詳しく解説します。
十分な水分補給
血液をサラサラにするために、十分な水分補給を心がけましょう。
脱水は血栓症であるエコノミークラス症候群や脳梗塞・心筋梗塞の誘因のひとつで、脱水の予防は血栓症の予防に重要なポイントです。
1日に摂取が必要な水分量は食事と飲み物をあわせて2リットル以上と言われます。
1日を通して2リットル以上の水分摂取を心がけるとともに、水分不足になりやすいタイミングでのこまめな水分補給を意識しましょう。
- 寝起き
- 運動時
- 入浴前後
- 就寝前
また、飲み物の種類については、状況に応じて選ぶことが大切です。
基本的には利尿作用のあるカフェインやアルコールを含まないもの、カロリーを含まないものが理想的です。
運動で汗をかいた場合には、適度な塩分・糖分を含んだスポーツドリンク等が適する場合もあります。
生活習慣病改善のためのバランスの取れた食事
血液をサラサラにして動脈硬化による血栓の形成を防ぐために、生活習慣病の改善、及びそのための食事改善を行いましょう。
脂質異常症、糖尿病、高血圧といった生活習慣病は動脈硬化を進行させて血栓リスクを高めます。
これらの疾患の予防・改善により、血栓のリスクを下げることに繋がります。
具体的な食事内容は疾患ごとに異なりますが、おもに以下のようなポイントが大切です。
- 肥満改善のためのカロリー管理
- たんぱく質、脂質、炭水化物など摂取栄養素のバランスを整える
- 各種生活習慣病のリスクにつながる栄養素および食品を控える(塩分、飽和脂肪酸など)
- 各種生活習慣病のリスク低減に関わる栄養素及び食品を積極的にとる(食物繊維、多価不飽和脂肪酸など)
ただし、生活習慣病改善のための食事について、具体的な内容はその人の体の状態によって異なります。
健康診断等で生活習慣病を指摘された場合には、医師の診断を受け、医師及び管理栄養士などに相談の上、具体的な食事プランを作成するようにしましょう。
血液をサラサラにする食べ物・飲み物とは?
血栓のリスクのひとつである生活習慣病の予防・改善には、食事が深く関係しています。
血液をサラサラにして血栓リスクを下げるためには、生活習慣病のリスク低減に関わる栄養素及び食品を積極的に摂ることが大切です。
血栓リスク低下のための生活習慣病の改善を目指すときに意識して取り入れたい食べ物・飲み物の具体例と取り入れ方について詳しく解説します。
水、カフェインレス飲料
水やカフェインレスの飲み物は血栓リスクの低減に重要です。
こまめに水分補給を行うことで血液の粘稠性を下げてサラサラにし、血栓の出来にくい状態にすることを助けます。
飲み物の中でもアルコールやカフェインを含まない飲み物は利尿作用がないことから効率的な水分摂取に適しています。
また、肥満や生活習慣病がある場合には、無糖でカロリーを含まないものが最適です。
このような条件を満たす飲み物としては、以下のようなものが挙げられます。
- 水
- 無糖の炭酸水
- 麦茶
- ルイボスティー
- カフェインレスコーヒー
- カフェインレス紅茶
好みや食事に合わせて、お好みのものを選ぶとよいでしょう。
魚
脂質異常症(特に高LDLコレステロール血症)がある場合には、食事に魚を取り入れることで血栓リスクの低減に繋がります。
魚は多価不飽和脂肪酸(DHA、EPAなどのn-3系脂肪酸)を豊富に含む食材です。
多価不飽和脂肪酸は血液中のLDLコレステロールを減らす働きがあるため、魚を積極的に取り入れることで血中コレステロール値の改善に役立ちます。
魚の中でも青魚と呼ばれる以下のようなものは多価不飽和脂肪酸を多く含むのが特徴です。
- サバ
- イワシ
- サンマ
- サケ
- マグロ
多価不飽和脂肪酸を反対の作用を持つ「飽和脂肪酸」を比較的多く含む肉類と置き換えて使うことで、食事からの摂取脂肪酸のバランスを改善することにつながります。
肥満がある場合には、揚げ調理を避け、焼き調理や蒸し調理を選ぶとカロリーオフが可能です。
レトルトの商品や缶詰などは負担なく魚を食べる頻度を増やすことができるのでおすすめです。
大豆製品
大豆製品も脂質異常症がある場合の食事改善におすすめの食材です。
大豆製品は肉、卵、牛乳などと同じ「たんぱく質食品」ですが、その中でも血中コレステロールを増やす飽和脂肪酸が少なく、コレステロールも含まないのが魅力です。
- 蒸し大豆
- 豆腐
- 納豆
- 厚揚げ
- 豆乳
これらのうち、蒸し大豆や納豆など大豆丸ごとの大豆製品は食物繊維の摂取源にもなるため、生活習慣病の予防や改善により効果的な食材と言えそうです。
大豆製品は動物性の食品(肉、卵、牛乳)と置き換えて使うことで飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量を減らし、血中脂質の改善に役立ちます。
毎日の食事で肉・卵料理が連続しないよう、大豆製品をうまく取り入れましょう。
また、大豆製品のうち、納豆については摂取に注意が必要な場合があります。
脳梗塞や心筋梗塞の治療のために「ワーファリン(ワルファリン)」という薬を服用している場合には、納豆に多く含まれるビタミンKがその効果を弱めてしまうため、摂取制限が必要な場合があります。
さらに、血液サラサラ効果のある成分として「ナットウキナーゼ」がよく知られていますが、ナットウキナーゼを含むサプリの血栓予防効果については注意が必要です。(後半で解説します。)
植物油
植物油も脂質異常症の改善のために取り入れたい食材です。
植物由来の油脂は動物由来の油脂(肉の脂身、バターなど)と比較して飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸が多い傾向にあります。
そのため、動物性油脂と置き換えて使うことで、摂取脂肪酸のバランスを整え、脂質異常症(特に高LDLコレステロール血症)の改善に役立ちます。
- なたね油(キャノーラ油)
- 大豆油
- サラダ油(植物油をブレンドしたもの)
- オリーブオイル
- 米油
- えごま油
- 亜麻仁油
具体的には、牛脂、ラード、バターの使用を控え、代わりに植物油を調理に取り入れるのがおすすめです。
脂身の多い肉を低脂肪のものに替え、植物油を活用した炒め物などにするのもよいでしょう。
普段の食事に単にプラスするだけでは脂質及びカロリー摂取を増やすだけで逆効果になってしまうため注意しましょう。
野菜、海藻、きのこ
野菜、海藻、きのこは生活習慣病全般の予防・改善に積極的に取り入れたい食材です。
野菜、海藻、きのこは低カロリーな食材であり、積極的に取り入れることで食事のボリュームを保ちながら摂取カロリーを減らすのに役立ちます。
また、これらの食材は食物繊維の主な摂取源でもあります。
食物繊維は血糖値の上昇を抑える働きや、腸管内でコレステロールを吸着して排泄する働きが知られており、糖尿病・脂質異常症の予防や改善に役立ちます。
さらに、カリウムの効率的な摂取源でもあります。
カリウムは高血圧のリスク要因である食塩(ナトリウム)の排出にかかわる栄養素で、高血圧の予防の改善のために積極的にとりたい栄養素です。
食物繊維やカリウムを多く含む野菜類としては、以下のようなものが代表的です。
- ほうれん草
- ブロッコリー
- オクラ
- モロヘイヤ
とはいえ、これらの種類にこだわらず、様々な野菜・海藻・きのこをたっぷり取り入れるのが理想的です。
野菜、海藻、きのこは1日350gを目標に、毎食小鉢1~2個分をとれるように心がけましょう。
精製度の低い穀類
玄米や小麦全粒粉などの精製度の低い穀類も各種生活習慣病の改善に効果的です。
精製度の低い穀類には以下のような食品が当てはまります。
- 玄米
- 押し麦、もち麦
- オートミール
- 雑穀類
- 全粒粉製品(パン、パスタなど)
- 分つき米(3分づき、5分づき,7分づき)
- 麦めし(押し麦、もち麦を炊き込んだご飯)
これらの食品は精製度の高い精白米や小麦製品と比較して食物繊維を多く含むのが特徴です。
野菜等に含まれる食物繊維と同様に、血糖値の上昇抑制やコレステロールの排出に役立ちます。
普段のご飯やパンを上記のような精製度の低い穀類に切り替えることで摂取カロリーを増やさずに食物繊維の摂取量を増やすことができます。
玄米ご飯が食べにくいという場合には、少しだけ精米を行った「分つき米」や、白米に押し麦を混ぜて炊いた麦めしなどが食べやすくおすすめです。
ナッツ類
「血液ドロドロ」の原因となる脂質異常症や糖尿病がある場合の間食には適量のナッツがおすすめです。
ナッツ類に含まれる脂質は不飽和脂肪酸の割合が高くなっており、飽和脂肪酸を多く含むような食品(洋菓子など)と置き換えて取り入れることで、摂取する脂肪酸のバランスを整えることに役立ちます。
また、糖質が少なく食物繊維も比較的多い食品であるため、血糖値を上げたくないときの間食に最適です。
チョコレートやスナック菓子など、飽和脂肪酸の多いお菓子類の代わりに間食として取り入れるのがおすすめです。
- クルミ
- アーモンド
- ピーカンナッツ
- カシューナッツ
- ピスタチオ
これらのナッツ類を選ぶときは「素焼き・無塩タイプ」を意識しましょう。
また、重さあたりのカロリーが高い食品グループでもあるため、適量を守ることが大切です。
1日あたりの摂取量は15g程度(100kcal前後)に留めるようにしましょう。
低脂肪の乳製品
血管にダメージを与える高血圧の改善のため、低脂肪の乳製品がおすすめです。
乳製品に含まれるカルシウムは十分に摂取することで血圧の低下が期待できます。
乳製品に含まれる脂質は飽和脂肪酸が多いため、低脂肪タイプを選ぶのがポイントです。
- 低脂肪乳
- ヨーグルト(低脂肪タイプ)
- カッテージチーズ
これらの低脂肪乳製品は、一般的な牛乳、ヨーグルト、チーズ類と置き換えて使うとよりよいでしょう。
もともと乳製品をとる機会が少なかった方は、朝食などに意識して取り入れるのがおすすめです。
減塩調味料
血栓のリスク要因となる高血圧の改善のためには、減塩調味料が効果的です。
食塩(ナトリウム)のとりすぎは高血圧の原因の一つで、高血圧改善のために減塩が求められます。
減塩調味料は通常のものより塩分含有量を抑えたもので、普段と同じ量を使用しても自然に塩分摂取を減らせるものです。
- 醤油
- 味噌
- ソース類
- ドレッシング
- ケチャップ
- ポン酢
- 顆粒だし
減塩調味料は上記のような種類があり、様々なメーカーから幅広く販売されています。
食塩摂取量を減らすために、普段の調味料を減塩タイプに切り替えることをおすすめします。
ただし、腎機能の低下がある場合には、減塩調味料に含まれるカリウムが制限されることがあります。
心配な場合には医師や管理栄養士に相談の上で取り入れると安心です。
ノンアルコール飲料
高血圧がある場合には、ノンアルコール飲料を活用してアルコール摂取量を減らしましょう。
アルコールの過剰摂取は高血圧の原因の一つであり、飲酒制限をすることで血圧の低下が期待できます。
また、アルコールのカロリーや利尿作用を考慮すると、肥満の改善や脱水の予防のためにも節酒を心がけたいところです。
ノンアルコール飲料は年々増加しており、以下のような商品タイプが存在します。
- ノンアルコールビール
- ノンアルコールカクテル
- ノンアルコール日本酒
- ノンアルコールワイン
- ノンアルコール梅酒
また、ノンアルコール飲料では糖類が多く含まれるジュースのようなものも少なくありません。
できれば糖類を含まないゼロカロリーのものを選ぶようにしましょう。
低カロリー甘味料
「血液ドロドロ」の原因となる肥満や各種生活習慣病の改善に、低カロリー甘味料の活用も効果的です。
低カロリー甘味料は砂糖と比較して同じ甘さでもカロリーを低く抑えられるもので、以下のようなものがあります。
- ソルビトール
- キシリトール
- エリスリトール
- ステビア
- アスパルテーム
これらの低カロリー甘味料を砂糖の代わりに取り入れることで、摂取カロリーの低下に役立ちます。
また、砂糖やガムシロップなどに含まれる果糖を減らすことができるので、血中中性脂肪値の抑制にも役立ちます。
取り入れ方としては、コーヒーや紅茶に加える砂糖やガムシロップのほか、料理に加える砂糖、はちみつなどを低カロリー甘味料に切り替えるのがおすすめです。
血液をサラサラにすると噂の食べ物・サプリメントの効果
一般に「血液をサラサラにする」とされる食品や、その食品成分を抽出したサプリメントに血栓のリスク低減効果が期待されることも少なくありませんが、これらの食品の使用は慎重に判断するようにしましょう。
血液をサラサラにするイメージが強いものでも、実際には医学的な根拠がないものが多く、医薬品と同じような効果は得られない事がほとんどです。
血栓症、特に動脈硬化を原因とする「血液ドロドロ」の改善には、肥満の解消や食事改善が基本で、サプリメントや健康食品では根本的な解決に繋がりにくいと言えます。
一般的に「血液サラサラに良い」とされる食品、及び食品成分について効果を解説します。
玉ねぎ・にんにく(アリシン)
血液サラサラ食材として知られる玉ねぎやにんにくについて、食べるだけで血液がサラサラになるものではありません。
玉ねぎやにんにくに含まれるアリシンという食品成分は血液の凝固を妨げられて血栓を作りにくくするとされていますが、これは試験管内での実験の内容であり、食事から摂取することでの効果は未だ明らかになっていません。
玉ねぎを低カロリー食材である野菜のひとつとして取り入れる分には問題ありませんが、血液サラサラ効果を期待しすぎるのは禁物です。
食事内容が玉ねぎやにんにくばかりに偏ったり、成分を抽出したサプリメントを飲んでいるからと食事改善を行わなかったりすると、期待した効果が得られないばかりか、身体の状態悪化にも繋がりかねません。
納豆(ナットウキナーゼ)
納豆は玉ねぎと並んで血液サラサラ食材として知られていますが、こちらも過度の期待は禁物です。
納豆に含まれる「ナットウキナーゼ」という酵素が血栓を溶かす作用がよく知られていますが、こちらも試験管内での効果であり、食事として納豆を取ったときに体内で血栓が溶ける効果があるかは明らかになっていません。
また、納豆に含まれるビタミンKは脳梗塞や心筋梗塞の治療・予防の為に服用する「ワーファリン」の効果を弱めてしまいますので、治療内容によっては納豆そのものの摂取に制限が必要な場合もあります。
納豆や納豆を原料としたサプリメント等を利用したい場合には、医師や薬剤師、管理栄養士に相談するようにしましょう。
抗酸化物質(ポリフェノール、クエン酸など)
抗酸化ビタミンやポリフェノールなどの抗酸化作用のある物質が血液をサラサラにすると言われています。
抗酸化作用のある物質は多く、必須栄養素であるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEのほか、クエン酸やアスタキサンチン、各種ポリフェノールなど多岐にわたり、身近な食品に幅広く含まれています。
- ビタミンA(レバー、緑黄色野菜)
- ビタミンC(野菜、果物)
- ビタミンE(油脂類、野菜類、ナッツ類など)
- クエン酸(レモン、グレープフルーツなど柑橘類)
- 各種ポリフェノール(コーヒー、緑茶、赤ワイン、ココア、野菜・果物など多数)
- アスタキサンチン(エビ・カニ・サケなど)
これらの過酸化物質はいずれも体内で動脈硬化の一因となる活性酸素の除去作用により動脈硬化を抑制する作用があります。
とはいえ、抗酸化物質について、何をどれくらい摂取すれば動脈硬化が抑制されるのか、心筋梗塞や脳梗塞の予防に役立つのかについてはいまだ不透明な部分が多いのが現状です。
抗酸化物質を含む食品やサプリメント等を摂取するだけで動脈硬化が抑制されて血栓症が予防できるわけではありません。
必須栄養素であるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは不足しないように、その他の抗酸化物質は基本的な食事改善に付け加えるものとして、あくまで補助的なものとして取り入れることを意識しましょう。
血液をサラサラにするための食事以外の生活習慣のポイント
血栓リスクの低い「サラサラ血液」にするためには、食事だけでなく生活習慣の見直しも大切です。
血栓リスクを高める動脈硬化、生活習慣病の改善のために取り組みたいポイントを紹介します。
適度な運動
肥満の解消や生活習慣病の改善のために、適度な運動を積極的に取り入れましょう。
運動不足は肥満や生活習慣病の原因の一つであり、長時間同じ姿勢でいることはエコノミークラス症候群を引き起こすことがあります。
適度な運動によって、以下のような効果が得られることが知られています。
- 消費カロリー増加による肥満の改善
- 血圧低下作用
- 血糖コントロール改善
- 血清脂質改善
運動は軽め~中程度の有酸素運動(ウォーキングや自転車など)が望ましく、1日30分以上・週3回以上(できれば毎日)または週で合計150~180分、運動をしない日が2日以上続かないように取り組むのが目標です。
とはいえ、年齢や身体状況によっては難しいこともありますので、具体的な運動内容については医師と相談の上で決定することをおすすめします。
1日の中で座りっぱなしの時間を減らすことも大切で、座り仕事であっても定期的に立ち上がったりストレッチを行う、エレベーターやエスカレーターではなく階段を意識して使うなども効果的です。
規則正しい生活、十分な睡眠
規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとりましょう。
不規則な生活では短時間睡眠による睡眠不足や夜食の食べ過ぎ、朝食の欠食などが起こりやすくなります。
睡眠不足は自律神経に悪影響を及ぼし、高血圧の原因の一つとなります。
また、短時間睡眠や夜ふかし習慣、それによる朝食の欠食は肥満や糖尿病とも関連していることから、血栓リスクを下げるために十分な睡眠とそのための規則正しい生活が大切です。
- 早めの寝る時間を決めておく
- 寝る前の間食・夜食は避ける
- 帰宅が夜遅くなる場合には夕方頃に軽めの食事を取っておく
- 朝は早めに起きて朝食をとる
- 1日3食を心がけダラダラ食べない
夜ふかし・朝寝坊が習慣になっている人は、まず早い時間に布団に入ることを意識してみてはいかがでしょうか?
禁煙
血栓によって血管を詰まらせないために、禁煙に取り組みましょう。
煙草に含まれる有害物質である一酸化炭素や活性酸素は血管の内側を傷つけ、血中の脂質を酸化させ、血栓の形成を促進します。
また、血圧の上昇や血糖コントロールの悪化などの動脈硬化性疾患だけでなく、呼吸器疾患やがんにも関係していることから、全身の健康維持のためにも早めに禁煙に取り組むことをおすすめします。
禁煙補助薬や禁煙外来なども活用し、なるべく負担を減らしながら禁煙に取り組めるとよいでしょう。
ストレスをためないようにする
適度な休養・リフレッシュを心がけ、身体的・精神的ストレスをためないようにしましょう。
精神的なストレスに加え、睡眠不足や疲労などの身体的ストレスがあると自律神経の乱れから高血圧や糖尿病のリスクを高めます。
十分な睡眠時間をとることに加え、趣味の時間をとるなどの精神的なリフレッシュも大切です。
血液をサラサラにする食べ物に関するよくある質問
「血液をサラサラにする食べ物」について、よくある質問に答えます。
血液サラサラ、ドロドロの定義や予防・改善のために意識しておきたいことをまとめましたので、是非参考にしてくださいね。
「血液サラサラ」とはどんな状態を指しますか?
血液の粘稠度だけを示すものではなく、「血栓ができにくい血液及び血管の状態」を一般に伝わりやすく表した言葉です。
正式な医学用語ではないため、決まった定義はありませんが、今回の記事では以下のような状態であると考えました。
- 脱水状態ではないこと
- 動脈硬化が抑制されている状態
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症が改善・進行予防されている状態
ただし、一般的に「血液サラサラ」には明確な定義がないため、健康情報において「血液サラサラ」と表現されていても、上記の効果が得られるとは限らないことに注意が必要です。
血液がドロドロになるとどうなりますか?
脱水や動脈硬化によって「血液ドロドロ」の状態になると、血栓が形成されるリスクが高まります。
長時間同じ姿勢でいることが原因で静脈に血栓ができ、肺の血管に詰まるとエコノミークラス症候群となります。
また、動脈硬化が原因で動脈内に血栓ができ、心臓や脳の血管に詰まると心筋梗塞や脳梗塞となります。
血液をサラサラにする食べ物はありますか?
脱水が原因で血栓リスクが高まっている場合には、水分補給でリスクを低くすることが可能です。
動脈硬化や生活習慣病が原因の場合には、医薬品のように食べるだけで血液がサラサラになり、簡単に血栓リスクが減少する効果のある食品は無いと考えましょう。
そのうえで、動脈硬化の進行抑制、生活習慣病の改善のための食事改善に役立つ食品を「血液をサラサラにする食べ物」と考えることもできます。
魚、大豆製品、植物油、野菜、海藻、きのこ、精製度の低い穀類、ナッツ類、低脂肪の乳製品、減塩調味料、ノンアルコール飲料、低カロリー甘味料などが挙げられますが、食べれば食べるほど良い、ということではなく、バランスの取れた食事の中で適量をとることが大切です。
サプリメントや健康食品で血液はサラサラになりますか?
サプリメントや健康食品の一部には「血液サラサラ」をイメージさせる製品もありますが、血栓予防の薬のような効果が得られるものは無いと考えましょう。
サプリメントや健康食品は医薬品とは異なり、効果や安全性が十分に確認されていないことが少なくありません。
また、特定の成分の過剰摂取や、他の薬・サプリメント等との相互作用により、思わぬ健康への悪影響が起こるリスクもあります。
サプリメントや健康食品の使用を検討している場合には、主治医や薬剤師、管理栄養士などの専門家に相談するようにしましょう。
生活習慣病が原因となる血栓の予防には食事を始めとして生活習慣の改善が最も重要であり、サプリメントや健康食品はあくまで補助的なものと考えましょう。
まとめ
「血液サラサラ」「血液ドロドロ」は正式な医学用語ではなく、決まった定義はありません。
一般的に医療現場では「血液ドロドロ」とは脱水や動脈硬化によって血栓ができやすい血液及び血管の状態を表すものとされています。
また、「血液をサラサラにする」とは、単に血液の粘稠度だけを示すものではなく、「血栓ができにくい血液及び血管の状態」を表すものと考えましょう。
血液をサラサラにして血栓症を予防するには、動脈硬化およびその原因となる生活習慣病の改善が重要です。
生活習慣病の改善のために積極的に取り入れたい食品として、魚、大豆製品、植物油、野菜、海藻、きのこ、精製度の低い穀類、ナッツ類、低脂肪の乳製品、減塩調味料、ノンアルコール飲料、低カロリー甘味料がありますが、生活習慣病の種類によって優先度は異なりますので、医師や管理栄養士と相談の上、バランスの取れた食事の一部として適量を取り入れましょう。
また、食事改善以外にも、適度な運動、規則正しい生活、十分な睡眠、禁煙、ストレスを貯めないようにするなど、生活面の改善も重要です。
特定の食品に頼りすぎず、食事を中心とした生活習慣の改善で将来にわたって健康を維持したいですね。
参考文献
一般社団法人日本動脈硬化学会:「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
一般社団法人日本糖尿病学会:「糖尿病診療ガイドライン2024」
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書
岡村 菊夫, 鷲見 幸彦, 遠藤 英俊, 徳田 治彦, 志賀 幸夫, 三浦 久幸, 野尻 佳克, 「水分を多く摂取することで, 脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか?」システマティックレビュー, 日本老年医学会雑誌, 2005, 42 巻, 5 号, p. 557-563
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 糖尿病サイト:「糖尿病と血管」
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報「アリシン、ナットウキナーゼ、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、クエン酸、アスタキサンチン」
記事監修
院長 渡邉 秀美代
- お茶の水橋交番横クリニック 院長
- 医学博士
- 総合内科認定医
- 内分泌内科専門医
- 内分泌内科指導医
- 産業医
- JSCTR認定GCPパスポート(日本臨床試験協会)
管理栄養士 平井 しおり
2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。
現在は、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。